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DB短編小説
踊るZ捜査線!

最終更新日:2004/11/25

 

大丈夫だ…
オレは床に転がる人物に目をやる
大量の血があふれ出ている
死んでいるはずだ
凶器はベランダから海へと投げ捨てた
裏ががけでよかった
犯行に使ったものを処分するのは大変なのだ
それよりアレを探さなくては…
少し大げさに部屋の中を物色する
その方が外部の物取りの犯行にできるからだ
しかし見つからない
確かにあいつはアレを隠しているはずなのに
!?
なんだ!こいつまだ生きていたのか!?
しまった…こんなものを残されるとは…
しかたない
これでなんとかしよう
オレはあいつが死んだことを今度こそ確かめ、部屋を後にした
大丈夫、オレがやったという証拠は何一つないはずだ










けたたましいサイレンとともにパトカーが何台もやってくる
現場は丘の上の豪邸
建物の裏はすぐがけになっていて海が近い
門から建物にかけて広い庭になっている
花壇がいくつもあってベンチもある
のどかな公園のような庭も今はパトカーの赤い光が飛び回っている


「こちらが現場です、管理官!」
制服を着たラディッツ巡査が案内をする
黒のロングコートを着込み颯爽と歩いてくる黒髪の逆立った男
その眉間にはしわがよっている
本庁捜査一課管理官 室井ベジータ警視正だ


手袋をはめながら現場の部屋に入ろうとしたとき
随分後ろから殺人現場にそぐわない軽い声が聞こえた
「だから〜トランクスは恩田さんの方がよかったんじゃねえか?」
「はあ!?ボブカットのことはもうほっといてください。今は短いんですから。第一こっちのほうがキャラに…」
「おい…睨まれているぞ。」
ベジータはため息をついた
現場で会いたくないNo1のやつを見つけてしまったのだ
緑のアーミーコートを羽織り、へらへらと笑っているあいつ
青島悟空巡査部長
なにかと事件がらみで会うことが多くなったが
なんでこいつが刑事になれたのか不思議だ
その後ろにいるのは
新人のキャリア組真下トランクス警部補とベテラン刑事の和久ピッコロ巡査長だ
「チッ、とにかく入れ!」
ベジータは苦虫を噛み潰したような顔で言った



「ここが現場だ。貴様ら荒らすんじゃないぞ。」
「ひゃ〜すげえ血だな。」
すでに鑑識によっていろいろ印がつけられている
まだ移動されていない遺体の頭の近くに血で矢印のようなものが書かれている
「おそらくダイイングメッセージだろう。ガイシャが死ぬ前に残した犯人を指すヒントだ。」
矢印の先には雑誌が開かれて落ちている
そのページは人気新人俳優ターレスの特集記事だ
ラディッツ巡査が報告をする
「被害者はこの館の主スラッグ氏。映画やドラマの監督をしています。死亡推定時刻は夜中2時あたりと思われます。」
「部屋が随分荒らされているが、物取りの犯行か?」
ピッコロが的確な質問をする
「いえ、なにが盗まれたのかのもわかっておりません。美術品なども盗まれてはいないようです。」
「おい、この屋敷には他に人はいなかったのか?」
どこまでもえらそうにベジータが言い放つ
「昨日この屋敷で小さな集まりがあったようで、被害者のほかに四人の人間が泊まっていました。」
「では、その中に犯人がいるということも…」
トランクスの言葉にベジータが続ける
「もちろんだ。そいつらの報告は?」
「はっ!全員俳優でターレス氏、セル氏、ボージャックザンギャ夫妻です。次回の映画のために親睦を深めようと集まったそうです。」
「ターレスってさっきの雑誌のやつじゃねえか!だったらそいつが犯人だろ?」
「まだ決め付けるわけにもいかんだろう。そう見せかけた犯人の手かもしれん。」
「では、これからそいつらの取調べをする。つれて来い。」
「了解しました。みんな忙しいから早くして欲しいらしいです。」


「一人ずつ個別に取調べをする。お前らも一緒に聞け。いいか、邪魔だけはするなよ。」
3人をそれぞれ睨みつけながら警告する


一人目ターレス
「オレと監督?今回初めて会ったよ。今度の映画のオファーが来たのもテレビでオレの事見て決めたらしいし…」
「昨日夜中2時前後どこにいた?」
「寝てたよ。当たり前だろ!?何にもしらねえよ。」


ピッコロたちが口を開く
「なんとも言えんな。」
「特に動機がありませんね…アリバイがなくても怪しくない時間ですし。」
「やつらが本当に初対面だったのかこれから調べさせる。」
「え〜オラあいつだと思うんだけどな〜」
「どういうことだカカ…青島。」
今のでなにかおかしいと思ったのかと思いきや
「だって矢印が…」
「貴様だまってろ!」


二人目セル
「私と監督は知り合いといった程度だ。別に友達じゃあない。彼の作品には何個か出ている…それだけだ。夜中は寝ていた。」
「まあ、そうだろうな。」
「私は忙しいんだ。早く帰してくれないか。」
「オレも急いでいる。なるべく協力しろ。」
協力したくもなくなるエバリっぷりである


「やはり犯行時刻起きている方が不自然だ。」
「それにしても有名俳優とこんなところで会えるなんて。」
「真下知ってんのか?」
「先輩テレビ見ないんですか?ターレスはこの前新人賞とってて、若手では実力No1と言われてるんですよ。」
「へえ〜」
「セルも最近急に出てきて、渋い演技で人気なんです。」


三人目ボージャック
「オレは昨日飲みすぎてあんまり覚えてないんだ。スラッグとは付き合い長いが…女関係でいろいろ言われてるらしいな。」


「ボージャックが大量に飲んでいたことは確認済みだ。どれだけ酔っていたかはわからんがな。」
「あいつ知ってるぞ!この前のテレビで宇宙人と戦ってたやつだ!やっぱつええんかな。」
「奥さんが同室だったんですよね。夜中とはいえ、ばれずに抜け出せるでしょうか。」


四人目ザンギャ
「私、夜中外に出たんです。眠れなくて…2時近かったと思います。でも私はスラッグのところには行ってません!庭にいたんです。」
「その時他に部屋から出たやつを見なかったか?」
「いえ、見ませんでした。」
「庭に車などなかったか?自分たちの以外のものだ。」
「ありませんでした。月が明るかったのでよく見えたと思ったのですが、怪しいものはなかったと思います。」


「外に出たやついたな!怪しくねえか?」
「犯人がわざわざ不利なことを言うか?別に寝ていてもおかしくない時間だ。」
「あの話を信じるとすると犯行前後、怪しい車や人を見なかった。すると中にいる人たちが怪しいです。」
「オラ誰の話信じたらいいかわっかんねえよ〜」
「まあ、確かにな…女関係が、と言われてあいつが関係してると思うのも安直だ。」
「やはりあのダイイングメッセージに戻りましょうか。」



現場に戻ってきた四人
遺体はすでに運ばれている
「こんな雑誌などすぐに出せる。他のものがあったかもしれん」
冷静なピッコロが考察する
すぐ脇で悟空が携帯で電話をしはじめた
「あ、悟飯?オラだよ。また困ったからちょ〜っと来てくんねえかな。」
「おい、青島!誰呼んでやがるんだ!!」
「息子の悟飯だけど?あいつ結構事件解決してるんだ。」
「ガキなんか呼ぶな!」



しばらくして悟飯が到着した
一通りの説明を受ける
そして現場に入り遺体のあった印のところで考え込む
その時黒かった髪が金色になり逆立った
「お!悟飯、謎解けたみてえだな」
「なに!?ガキの分際でオレたち警察を抜いただと?」
「みんなをここに集めてください。」
そう言った悟飯の顔にはさっきみせた優しさはなく、自信に満ち溢れていた




現場の部屋に集められた四人と刑事たち
すでに夕方になっており窓からは夕日が差し込んでいた
悟飯はその全員に向かって言った
「これから犯人を明らかにしていきます。」
「お前みたいなガキがか?笑わせるなよ。」
ターレスがからかうように言ったが、構わず悟飯は続ける
血で書かれた矢印を指し
「これはやっぱり被害者のダイイングメッセージだったんですよ。」
「じゃあ、オレが犯人だって言うのかよ!?」
「いいえ。お父さんたちは変だと思いませんでした?」
「なにが変だって言うんだ!」
ベジータは馬鹿にされたと思い叫んだ
「こんなに体に近いところに矢印を書くなんて…これだったら指したものを手でつかめばよかったんです。」
「!!」
「これは矢印なんかじゃなかったんですよ。犯人の名前を書こうとしたんです。そう…」
ゆっくりと手を上げ
「あなたの名前をね!」
ビシッとセルを指差した
セルは驚きの表情が隠せない
「セルさん、あなたの「セ」と書こうとしたが途中で力尽きてしまい矢印のようになってしまったんです。」
「馬鹿な!それも犯人が私に罪を着せようとして…」
「雑誌なんか使ってターレスさんに見せかけようとして、そしてあなたにも?変ですよね。」
「…」
「おそらくあなたが部屋を荒らしている間に書いたものだ。じゅうたんではすぐに血は消せない。警察が調べればすぐにわかってしまう。だからあなたは矢印に見せかけたんです。」
「証拠はあるのか?私が犯人だという証拠が!」
「証拠はあなた自身にあります。あなたは服を着ていない。これだけ血が出れば、当然刺したあなたにも返り血がかかっているんですよ。」
「…」
「さっきこの部屋のシャワーを調べてもらいました。血を大量に洗い流した形跡がでましたよ。つまり、犯行当時体についた血を洗い流したってことですよね。」
「…くっそぉ!!」
そうだ、あの時余計なものを使えばそれの処分に困ると思い、返り血を防ぐものも用意しなかった…
それがこんなことになるなんて
「終わりだな、お前も…」
悟飯が冷たく言うと
「このクソガキ…どけっ!!」
セルは悟飯をつき飛ばし部屋から逃げようとドアに向かって全力で走りはじめた
ドアの前にいたトランクスにベジータが叫ぶ
「真下!確保だ!!」
「お前も邪魔だ!」
セルがトランクスをつかんだ瞬間
「絶対にお前を外には行かさん!!」
声とともにセルは宙に舞っていた
いきなりの一本背負いにセルは何もできなかった
「確保しました!って、なに!?」
トランクスが手錠をかける前にベジータが自分の手錠をかけていた
「ハッハッハッよくやった。」
「なにすんですか!オレが捕まえたんですよ!?」
「手錠をかけられるのは一人だけだ。つまりオレの手柄だ!」
「き、汚いですよ!」
「うるさい!オレよりいい大学出ただと!?ふざけんな!!」
セルを無視してバトルが展開されていた

「それにしても青島…まさかお前事件が起こるたび悟飯を呼んでるんじゃ…」
「え?そうだけどなにか?オラああいう風に犯人と格闘するのは得意だけど見つけんのは苦手なんだ。」
ははっと笑いながらいう悟空にため息をつくピッコロ
「なんでおまえが刑事になれたんだ。」
「ん〜なんか人手不足だってよ。」
この警察、長くはないかもなとピッコロは思った
「あの〜犯人なんか動機語ってるんですけど、みんな聞かなくていいんですか?」
黒髪にもどった悟飯が刑事たちに言った






オレはもともと不細工だった…だが二枚目俳優になりたかったんだ
オレは整形をして当時所属していた劇団を辞めた
第二の人生を歩きはじ…


(中略)


それをあいつがかぎつけてゆすってきやがった
昔の写真があるとか言ってな
金の亡者だ
オレは殺すしかないと思ったんだ





いまだ格闘中のベジータとトランクス
始終気の抜けまくりな悟空に呆然となっているピッコロ
哀愁を漂わせたセルの語りは
誰も聞いてなかった

 
 

−あとがき−
はい!踊る〜のパロと見せかけて(?)金田一少年風なできとなりました。
役立たずな刑事が増えただけとの見方も…
室井ベジータ結構はまってると思うんですが、どうでしょう?
その他のキャラもね。和久さんとか。
一応ミステリーっぽくしてみたんですが、犯人すぐわかりました?
悟空がヘタレなのは気にしないでください。

 

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